cocoyutaka's メモ

半自分用メモ

マンガ図書館Zで噂の「連ちゃんパパ」43巻(43話)を読んだ

 一部で話題の「連ちゃんパパ」を読む。

 

https://togetter.com/li/1508322
吐き気を催す邪悪を主人公にした読むストロングゼロ全43巻「連ちゃんパパ」の感想
 
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2005/13/news126.html
ありま猛『連ちゃんパパ』がなぜか突然ネットで流行 「スナック菓子感覚で摂取できる地獄」など悪夢のような感想が集まる

 

 上記の紹介リンクにあるように、北見けんいち(釣りバカ日記)や古谷三敏(ぐうたらママ)風の絵柄で、闇金ウシジマくんのような(殺人以外の)非道の限りを尽くすパチンコ狂いの主人公という話である。内容の露悪さに読むのを挫折する人も多いようだが、おおよそその悪行のリストを先に見ていたおかげで、最後まで完走することができた。

 

 簡単にまとめる。パチンコ依存で借金300万を作り男と逃げた妻を追う、高校教師と小学生の息子。妻を追う過程でパチンコにはまり、自らパチプロと名乗る。養護施設出身の借金の取り立て屋が息子に甘いことを利用し、同居の上、闇金取り立てに意外な才能を見せる。何度も男を変えた末に身ごもった妻ともよりを戻し、一度は金で売った息子と三人で最後は暮らすことになるのだが、そのパチンコ脳はもはや戻ることはなかった。

 

 他のエピソードもいくつもあるが、これだけでも胸がいっぱいになる話だ。救いがないようなあるようなところは、登場人物の八割は極端なエゴイストなので、ぶっちぎりでサイコパスな主人公の悪に若干サバイバル感や、もうここまで来たら何しても驚かないという印象を与えてしまう点だ。

 
 上記にウシジマくんのようだと書いたが、一読して思い出したのは「ナニワ金融道」だった。とあるエピソードのラストが、似たような、畑を共に耕し、再出発を誓う夫婦のシーンであった記憶がある。
 ナニワ金融道の連載1990年から1996年。連ちゃんパパの連載も1995年ということなのでほぼ同時期と言っていいだろう。
 また吉田栄作主演の「もう誰も愛さない(1991年)」をはじめとするジェットコースタードラマも彷彿させる。こちらも土地や金にまつわる悪の連鎖で、毎回状況がかわってゆく物語がウリだった。
 

 

 パチプロ7というパチンコ雑誌に連載されていたというが、これをみてパチンコをやりたいと思う人は少ないはずだ。逆に編集者をとおして様々ないわゆるパチンカスの事例を知り、それを反映させていたりするのかもしれない。バイト先の主人をパチンコ漬けにして、借金のカタに家屋を売却させるハメ方など、妙なリアリティがある(むろんナニワ金融道よりアバウトな描写だが)。

 パチンコ依存症によりおかしくなったとはいえ、だんだん金を得るためには手段を択ばなくなり、例えば、かつての教え子からのカンパを泣きながら受け取ったら、即座に笑顔でパチンコをはじめ、次のカモを思案するという、病気というのもおこがましい状態はまさにサイコパス

 

 しかしパチンコ依存症アルコール依存症などと比べるといささかやっかいだなとも思う。アルコールや、たばこなどの薬物系依存症は基本消費するだけだし、究極的には自分の命をもってお終いとなる。しかしパチンコ依存症の全てがそうだとは思わないが、金を稼いでいる、前向きなことをしているという認知が意識に張り付いているようで、他人を見下し勝ちなのがさらに度し難い。

 

 もっとも作品として気になる点もある。
 子供が引きこもりになるところを自閉症と書いているが、自閉症ってそういう一時的なものではないだろう。通常発達障害的な意味で使うものだ。作中でパチンコ依存症と診断しながらも、その医師が眠れないからと主人公にパチンコを勧めてしまうのも医療的ではない。
 また主人公の教師としての能力もややご都合主義的だ。高校教師なのに小学校の先生に再就職したり(小学校の免許は別ではないか?)、進学塾では二週間でクビになるのに、地元密着型小学生向け塾ではいい先生と扱われたり、キャラ設定がぞんざいだ。

 

 マンガ図書館Zで無料公開されたのがきっかけとはいえ、このご時世でバズったのには何か世相が隠されている気がする。
 流行が2、30年周期で巡るという考えもあるが、おそらく当時は話題になっていなかったはずだ。
 こういうサイコパスな人が増えたのか、単に広く可視化されはじめたのか。
 おそらく後者で、一つの「類型」として認知が高まったからだと思う。
 以前であれば、単に「クズ」という言葉で済み、まあ一定数悪い人もいるよね、で終わっていた。
 しかし、この「共感性が無い」ということの、恐ろしさと強さを、共感力を求められる時代だからこそ皆敏感になっているのではないか。

 そこにはいくらかの憧れすら込めて。
    

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%83%91%E3%83%91
連ちゃんパパ(wikipedia)

 

https://www.mangaz.com/book/detail/202371
連ちゃんパパ(マンガ図書館Z)

 

 

【追記】

実写化の際のキャストは誰だ話も盛んですが、むしろ自分はOPはどんなのがよいだろうかと妄想したところ、「サンデーパパ」が思い浮かび、今はその歌が頭にこびりついて離れません。あの底抜けな明るさがいい感じに恐さを演出するのではないか、と。

www.youtube.com