cocoyutaka's メモ

半自分用メモ

「彼方のアストラ(アニメ)」を一気見した

 一部で話題の「彼方(かなた)のアストラ」をdアニメストアで一気見した。

 「こんなのSFじゃないなど」の盛り上がりから、異論反論、原作漫画家らの反応などもあり、よくできている作品なのだろうという期待はあった。

 

 で、見た。

 

 実は最初の数話はほぼリアルタイムで見ていたのだが、主人公が熱血すぎて今一つのれなかった。しかし全12話(1話と最終話が1時間拡大版なので実質14話)を、連続してみると、これはあえて少年漫画のテンプレ構成から始まった宇宙ものジュブナイル冒険サバイバルもので、ややロマンスありのSFテイストなミステリ仕立ての親子対決ものな成長物語であった。

 要素てんこもりだが、それを奇をてらわず組み立てているところが実にうまい。ウェルメイドという感じだ。

 多くの人が反論しているが、結局SF畑の人が文句をいっているのは「俺の考えた最強のSF」とは違うので細かくいいつのっているだけで、物語として面白く、最高のSFであってほしいと期待してしまったがための発言だったのだろう。まあ、そういうのはちょっとわかる。どうでもいいなら多分そもそも熱くならない。

 

 ただなんというか、よく出来すぎていること、「実は……でした」という展開のいくつかを事前に知ってしまったせいか、個人的には大きな心の動きはなかった。うんうん、面白いねえ。うまいなあ。キャラもなかなか好感もてる感じだ。でも、まあ、それ以上心から沸き起こるような感想はない。

 ではこのほんの少しのひっかかりは何なのだろうとも考えた。

 

 ……あえていうと、主人公や周りのキャラの言う「考えてもわからないことは考えない」というセリフがどうも自分は気になっているようだ。

 

 メンバーの中に裏切り者がいるらしいというサスペンス状況の中で、主人公は疑心暗鬼になりそうなメンバーに向かって上記のことを言う。うじうじ考えて神経を擦り減らしたりするよりも、生き残るためにたとえ欺瞞があっても一緒に行動をしてゆこうということなのだろう。前向きでよい台詞、なはずだ。

 同時にミステリ的な仕掛けについて読者に「ま、ここは一旦気にせずに」と深読みをさせない、避けさせるような暗示的効果もあるだろう。

 実際、物語の終盤で主人公はその「裏切り者」について気づくという描写があり、そこから一気に謎の解決編に向けて物語が進んでいる(ミステリ的にはそこまでの情報で犯人が分かるはず、という読者への挑戦ポイントにもなっている)。

 

 何も問題ないじゃないか、とも見えるが、言葉とは裏腹に、主人公は上記の描写までに必死にその「裏切り者」が誰なのかを考えていたということになる。言い換えると主人公はそもそも「考えてしまう」人間であり、だからこそ「考えないでおこう」と周囲に宣言したのだろう。つまりはここにはちょっとした嘘がある。

 人を鼓舞したリ、集団をまとめあげるのにちょっとした嘘をつくことは必要だろう。熱血主人公のように見えてそのあたり、表面上のキャラとは少し違う部分があるということでそれ自体はキャラに深みを与えている。

 だが何だろう。そうではあるのだが、やはりちょっとここには物語の展開にあわせた台詞のようにも思える。熱血キャラが「難しいことは考えないでおこう」と言えば通常はそれが作品のメッセージのようにも見られる。そうはいっても考えてしまう、というような描写が「挑戦ポイント」までにもう少しあったならなおよかったなあ、と。

 

 と、以上、あえて文句をつけてみたがこれは荒さがしにすぎない。

 「考えてもわからないものにも考え続けることに意味はあるんじゃないの」という言葉のほうが個人的には好きで、行動としては実際そうなっている流れなのに、表面上にはそれが隠れているというのが何となく気になったというだけの話であり。だってむちゃくちゃ考えてつくられた作品、なのにねえ。

 

 多分この作品は長く評価される類のものと思う。過去のいろいろなジャンルものやSFガジェットについてのオマージュも強く、そういう過去の作品群の連なりを強く意識しているのが分かる。テーマの毒親問題とか、オリジナルとは何か等、今時だ。タイプとしては、「新世紀エヴァンゲリオン」や「涼宮ハルヒの憂鬱」の系列といえばいいだろうか(もっと地味だけど)。

 

 最近何か面白いアニメない?と聞かれたら、広くお勧めできること間違いない作品だと思う。